オゾン殺菌によるシークヮーサー果汁の品質向上
◆ 実験課題
シークヮーサー果汁を加熱殺菌した場合とオゾンによる非加熱殺菌した場合の商品品質の差を検証する。
◆ 実験方法
実験A:栄養価ノビレチン量の評価
・500mLビーカーに手絞りで搾汁したシークヮーサー果汁を300mL投入する
・ビーカー内の果汁に小型水中ポンプとエジェクタを用いてオゾンガスを混入する
オゾンガスは17g/m3 ✕ 0.5L/min で混合し、殺菌時間は30秒と2分の2種類で実施する
・加熱殺菌についてはビーカーに100mLの果汁を投入し80℃ × 20分間の湯煎を実施する
・搾汁前の果実を水洗浄したものとオゾン水洗浄したものについても比較を実験する
・無殺菌と加熱殺菌およびオゾン殺菌のサンプルを用いてノビレチン残留量を測定する
ノビレチンの測定は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による定量分析を実施する
HPLCは沖縄健康バイオテクノロジー研究開発センターの設備を利用する
分析に関する試料としては各果汁を遠心分離器にかけた後の上澄み液を用いて実施する
実験B:味と香りの評価
・上記3種類の果汁サンプルを試飲することで香りや味などについて官能評価を実施する
・参考のために市販のシークヮーサー果汁100%のジュースについても官能評価を実施する
実験C:一般生菌数の評価
・菌数評価については搾汁前に水洗浄した果実とオゾン水洗浄した果実の差もあわせて実施する
・実験Aと同様に加熱殺菌およびオゾン殺菌した果汁に対して一般生菌数を測定する
一般生菌数の測定は日水製薬のコンパクトドライTCを用いて実施する
◆ 実験結果
実験A:ノビレチン量(HPLCによる定量分析)
含有量 | 備考 | |
水洗浄 + 果汁殺菌なし | 17.9mg/L | 手搾りにより果皮のノビレチン回収が微小 |
水洗浄 + 果汁加熱殺菌 | 17mg/L | 殺菌なし果汁に対して5.0%減少 |
水洗浄 + 果汁オゾン殺菌 | 17.4mg/L | 殺菌なし果汁に対して2.8%減少 |
オゾン水洗浄 + 果汁殺菌なし | 17.9mg/L | 水洗浄と差異なし |
実験B:味と香りの評価(試飲による官能評価)
無殺菌果汁 | 〇 果汁本来のコクがある |
加熱殺菌果汁 | △ 苦味が増して香りとコクが弱くなる |
オゾン殺菌果汁 | 〇 多少香りが弱くなるがコクと酸味はほぼ同じ |
市販シークヮーサー果汁100% | △ 苦味が強くコクが弱い |
※あくまでも評価者2名の個人的な意見であることを補足する
実験C:一般生菌数(コンパクトドライによる測定結果)
一般生菌数郡 | ||
水洗浄 + 果汁殺菌なし | 55cfu/mL | 加熱殺菌よりオゾン殺菌のほうが 殺菌効果が弱い結果となった |
〃 加熱殺菌 | 0cfu/mL | |
〃 オゾン殺菌 | 2cfu/mL | |
オゾン水洗浄 + 果汁殺菌なし | 3cfu/mL | 搾汁前の果実をオゾン水洗浄した場合 無殺菌の果汁も含めて一般生菌は 少ないレベルで維持できる |
〃 加熱殺菌 | 1cfu/mL | |
〃 オゾン殺菌 | 0cfu/mL |
◆ 結論
ノビレチンの含有量について、加熱殺菌したものに比較して非加熱のオゾン殺菌したもののほうが多少ではあるが多く残留する結果となった。
味の評価について、果汁を加熱殺菌することにより少し苦味が増しコクが弱くなる。
それに対して非加熱のオゾン殺菌したものは無殺菌のものと同等のコクがあり加熱殺菌の果汁とは明確な違いを感じる。
一般生菌数の評価について、果汁をオゾン処理した場合には加熱殺菌と同等の効果は得られなかった。
しかしながら、搾汁前の果実をオゾン水で洗浄することにより搾汁後の果汁の一般生菌数は殺菌なしの果汁も含めて極めて少なくなる結果を確認した。
◆ 考察
今回の実験では手絞りによる搾汁であったため果汁のノビレチン含有量が少なかった。それにより加熱殺菌とオゾン殺菌によるノビレチン含有量の差を明確に評価できたとは言えないと考える。 従って、果汁製造メーカーの協力を得て加熱処理前の果汁を用いた実験を実施する必要がある。
さらに、果汁にオゾンを混入した時に発生する泡の対策も必要となるが、可能性として搾汁前の果実をオゾンで殺菌洗浄することにより搾汁後の果汁の殺菌作業を無くせる可能性もある。 あるいは最低でも果汁の殺菌作業の時間短縮などの簡素化ができると考える。