酒樽の脱臭実験
◆ 実験課題
酒樽の再利用において、先に使用していた貯蔵酒のかおりやカビ臭の脱臭が課題であり
オゾン水による殺菌と同時に脱臭の可能性を評価する。
◆ 実験方法
2種類の酒樽(樽A:長期間放置しカビ臭が残留するもの、および 樽B:貯蔵酒のかおりが強く残留するもの)を用いて、下記項目の実験による評価を実施する。
・酒樽の内部の空気をにおい袋に回収し実験前の原臭気を測定する
・所定濃度(0.7~0.8ppm)のオゾン水を酒樽いっぱいに充填し、20分間放置する
・オゾン水を排水した後の酒樽の空気をにおい袋に回収し脱臭後の臭気を測定する
・再度、所定濃度(0.7~0.8ppm)のオゾン水を酒樽いっぱいに充填し、20分間放置する
・オゾン水を排出した酒樽の空気をにおい袋に回収し再脱臭後の臭気を測定する
・さらに空の状態で1週間放置した酒樽の空気をにおい袋に回収し、放置後の臭気を測定する
脱臭効果については、におい袋に回収した臭気を用いて嗅覚による臭気簡易評価法(二点比較式臭袋法)で臭気濃度を測定し、その結果を用いて下記式にて算出する。
脱臭効果=1-( 脱臭後の臭気濃度÷原臭気の臭気濃度 )
・また、1週間放置する前に酒樽に水を充填した後、回収した水に含まれる一般生菌および真菌・カビ菌数を測定する
菌数測定は日水製薬のコンパクトドライを用いて実施する
実験状況
◆ 実験結果
臭気測定
項目 | 官能評価(臭気濃度) | ||||
原臭気 | 脱臭後 | 再脱臭後 | 放置後 | ||
樽A | 測定値 | 6 | 5 | 4 | 8 |
脱臭効果 | - | 17% | 33% | -33% | |
樽B | 測定値 | 600 | 40 | 30 | 200 |
脱臭効果 | - | 93% | 95% | 67% |
菌測定
項目 | 一般生菌数(cfu/mL) | ||
殺菌当日培養開始 | 殺菌2日後培養開始 | ||
樽A | 菌数 | 36,000 | 1,360,000 |
樽B | 菌数 | 10 | 13 |
項目 | 真菌・カビ数(cfu/mL) | ||
殺菌当日培養開始 | 殺菌2日後培養開始 | ||
樽A | 菌数 | - | 26 |
樽B | 菌数 | - | 2,040 |
◆ 結論
脱臭効果について、樽Aはカビ臭の明確な脱臭効果は得られなかったが、樽Bは90%以上の脱臭効果を得た。
また1週間放置後も70%近い脱臭効果を維持していた。
一般生菌数について、樽Aは多くの菌数を確認し2日後には顕著な増殖が見られたが、樽Bについては極めて少なく、
2日後の増殖もほぼない(測定誤差)状況である。
真菌・カビ菌数について、培養温度の違いから一般生菌測定後に培養を開始した。樽Aは菌数も少なく明確な増殖もないといえる状況だが、樽Bについては多くの菌数が確認できた。
◆ 考察
樽Aに関しては、かなり使い込んだ状態であり、カビが樽木に深く根付いていることが影響して脱臭効果やカビ菌回収が少なかったと考えられる。
樽Bに関しては、樽木にしみ込んだ貯蔵酒のにおいもオゾンによりかなりのレベルで分解できているため、1週間放置後もにおいの復活が抑えられたと判断する。ただ、カビ菌を多く確認したことに対しては、殺菌前や殺菌当日の菌数を測定しなければ殺菌効果は判断できない。
従って、樽Bを用いてオゾン水濃度や貯蔵時間などの条件を変えて再度実験を実施する。