果実に付着する除草剤の分解除去
◆ 実験課題
FILE152でオゾン水により土壌に残留する除草剤が分解できることを報告しました。
今回は実際の果樹園のシークヮーサーを用いて、果実表面にどれだけの除草剤が付着しているかを確認するとともに、オゾン水により除草剤がどれだけ分解除去できるかを確認します。
◆ 実験方法
除草剤を使用している果樹園のシークヮーサーを用いて、下記項目の実験による検体を生成し、沖縄健康バイオテクノ研究センターのHPLCにより分析および評価を実施する。
●検体 A
・除草剤の濃度評価のための検量線を作成する。
除草剤の主成分であるグリホサートとグルホシネートの標準試薬を下記濃度に希釈して分析
0.2μg/mL、1.0μg/mL、2.0μg/mL
●検体 B
・除草剤を使用した畑のシークヮーサーを水で洗浄して表皮からの除草剤回収レベルを分析
約20gの果実に対して10mLの精製水で洗浄する
・上記果実の水分を自然乾燥させた後に再度水で洗浄して表皮からの除草剤再回収レベルを分析
●検体 C
・上記と同様に所定濃度のオゾン水で洗浄して表皮からの除草剤回収レベルを分析
オゾン水濃度は1ppmと4ppmの2種類により実験する
・上記果実の水分を自然乾燥させた後に再度水で洗浄して表皮からの除草剤再回収レベルを分析
・オゾン水および精製水で回収した除草剤濃度の差異を用いて除草剤の分解除去レベルを評価
●検体の前処理(誘導体化)
・東京都健康安全研究センター公開2006年報”食品中に混入されたグリホサート(GS)
およびグルホシネート(GN)の迅速分析”を参照し、上記の各検体を処理する
●検体の分析
・各検体を下記条件によりHPLCで出力したグラフを用いて除草剤の残留レベルを評価する
カラム:逆相C18φ5μm × 150mm/GLサイエンス社InertSustain AQ-C18
移動相:0.02mol/L KH2PO4(pH2.5)・メタノール(2:3)
流速:1.0mL/min
カラム温度:40℃
注入量:20μL
検出波長:FLD/Ex.270nm、Em.300nm
実験・分析
◆ 実験結果
検量線( ピーク面積値 ) | GN RT=3.2 | GS RT=4.6 | ||
A1 | 検量線分析値 | 0.2μg/mL | 625.7 | 702.5 |
A2 | 〃 | 1μg/mL | 1240.3 | 2436.3 |
A3 | 〃 | 2μg/mL | 1848.1 | 4104.8 |
除草剤使用畑の果実 GN:グルホシネート |
除草剤残留量 果実1g当り |
1次処理結果 | 水再回収結果 | 除草剤 分解除去率 |
備考 | |||||
ピーク面積値 | 換算濃度 | 回収率 | ピーク面積値 | 換算濃度 | 回収率 | |||||
B | 水による洗浄 | 0.394μg/g | 246.4 | 0.1μg/mL | 10% | 239.4 | 0.1μg/mL | 9.7% | - | |
C1 | オゾン水洗浄 | 268.8 | 0.1μg/mL | 10.9% | 251.7 | 0.1μg/mL | 10.2% | -9% | オゾン濃度 1ppm | |
C2 | 〃 | 236 | 0.1μg/mL | 9.6% | 246.8 | 0.1μg/mL | 10.0% | 4% | オゾン濃度 4ppm |
除草剤使用畑の果実 GS:グリホサート |
除草剤残留量 果実1g当り |
1次処理結果 | 水再回収結果 | 除草剤 分解除去率 |
備考 | |||||
ピーク面積値 | 換算濃度 | 回収率 | ピーク面積値 | 換算濃度 | 回収率 | |||||
B | 水による洗浄 | 0.459μg/g | 1787.7 | 0.7μg/mL | 80.0% | 311 | 0.1μg/mL | 9.7% | - | |
C1 | オゾン水洗浄 | 345.5 | 0.1μg/mL | 10.7% | 0 | 0μg/mL | 0.0% | 87% | オゾン濃度 1ppm | |
C2 | 〃 | 346.7 | 0.1μg/mL | 10.8% | 0 | 0μg/mL | 0.0% | 87% | オゾン濃度 4ppm |
※ Bの回収率は1次処理および水再回収結果の換算濃度から推測し、Cの回収率は換算濃度と果実1g当りの残留量より換算(換算時は単位に注意)
※ 果実1g当りの除草剤残留量は換算濃度と回収率より換算(換算情報:果実質量20g、洗浄水量10mL)
◆ 結論
検体Aの分析よりほぼ直線的な特性曲線を得た。
種々の分析結果の残留濃度比較基準値として高レベルで利用可能と判断する。
検体Bの分析より果実1gに対して0.4μgの除草剤を検出した
検体Cの分析より除草剤が付着した果実をオゾン処理(オゾン水洗浄)することで下記の除去が可能
GN:水による回収率が10%程度と低い状況と判断するため、明確な除去率の確認は困難
GS:水による回収率が80%に対してオゾン水による回収率は10%であり、オゾン処理後の水による
再回収率が未検出のため90%以上がオゾンにより分解除去されている。
考察
GNの回収率が低いという課題はあるが、水洗浄に比べてオゾン水洗浄のほうが果実に付着した除草剤をより多く除去し、さらには洗浄後の水に含まれる除草剤についてもオゾンにより分解除去できることが確認できた。