排水の回収現場において即時に水中硫化水素濃度を測定する方法
◆ 課題
排水に含まれる硫化水素の濃度測定について、排水回収現場で即時に水中濃度を把握するために、環境省が推奨する測定方法を簡素化した方法で適切な測定ができるかを評価する。
◆ 実験方法
環境省が告示する特定悪臭物質の測定方法(環境庁告示9号)に記す ”第3 排出水中における濃度の測定” を参考にして、気相濃度の測定をガスクロの代わりにガス検知管により実施し、告示内の換算式により排水中の硫化水素濃度を検出できることを確認する。
【実験 A-1】
・試験管に硫化水素(粉末)を0.3g投入
・試験管を加熱しガス化した硫化水素を三角フラスコに供給
・三角フラスコ内で150mLの水にガスをバブリングし硫化水素を溶解する
・数日間放置し自然揮発を安定させる
・300mL容器に150mLの硫化水素溶液を投入して密閉状態とする
・30秒間容器を振とうした後にガス検知管にて容器内の気相ガス濃度を測定する
・換算式により排水中の硫化水素濃度を算出する
【実験 A-2】
・実験 A-1 の溶液を10倍希釈し、300mLの容器に150mLを投入し密閉状態とする
・容器を30秒間振とうし、数分間放置した後に気相ガス濃度を測定する
・換算式により排水中の硫化水素濃度を算出する
【実験 A-3】
・実験 A-2 と同じようにして30秒間振とうした後30℃の恒温槽に保管する
・30分後、気相ガス濃度を測定する
・測定結果を用いて換算式により排水中の硫化水素濃度を算出する
次に実際の排水サンプルを用いて排水中の硫化水素濃度を測定する
【実験 B-1】
・排水サンプル150mLを300mLの容器に投入し密閉状態とする
・容器を30秒間振とうし、数分間放置した後に気相ガス濃度を測定する
・換算式により排水中の硫化水素濃度を算出する
【実験 B-2】
・実験 B-1 と同じようにして30秒間振とうした後30℃の恒温槽に保管する
・30分後、気相ガス濃度を測定する
・測定結果を用いて換算式により排水中の硫化水素濃度を算出する
◆ 実験結果
気相濃度測定 | 水中濃度換算 | 備 考 | |
実験 A-1 | 30ppm | 454ppm | 気相において強烈な臭気を感じる |
実験 A-2 | 2.8ppm | 42ppm | 気相において強い臭気を感じる |
実験 A-3 | 2.8ppm | 42ppm | 気相において強い臭気を感じる |
実験 B-1 | 0.3ppm | 5ppm | 気相において弱い臭気を感じる |
実験 B-2 | 0.3ppm | 5ppm | 気相において弱い臭気を感じる |
◆ 結論
ガス検知管を用いた簡易式の測定方法に関して、排水回収現場における水中濃度把握や脱臭実験などにおいて十分に利用できるレベルの濃度測定が可能と判断する。
10倍希釈した状態での測定結果が希釈なしの測定結果に対して約7%の誤差であった。
ただし、高精度な測定を求める場合には環境省が告示するとおり、ガスクロを用いた正式な手段による測定が必要となる。
◆ 考察
溶液を振とうすることで液中に残留するガスが大量に揮発することがわかる。
今回の条件(常温20℃ ⇒ 30℃で保温)においては加熱による影響は少ないため、
加熱工程を省いた簡易測定でも大きな問題はないと考える。