テトラヒドロメチルフタル酸の除去実験
◆ 研究課題
プリント基板の樹脂コーティング工程でテトラヒドロメチルフタル酸が発生する。この成分は人的な毒性は問題ないレベルなのだが、生産ラインをカバーしている透明アクリル樹脂の表面が劣化して長時間稼動しているとすりガラスのように乳白化して困っている。施設外に排気すればよいのだが、空調などの関係で何とか室内で処理できないか という問い合わせをいただきました。
そこで、オゾンランプと触媒の組み合わせによる脱臭装置を、実際の樹脂コーティング装置の近くに設置して該当ガスを除去できないかを実験で確認する。
◆ 実験方法
・樹脂コーティングの装置の近くに脱臭装置を設置する。
・コーティング作業台近くと脱臭装置の排出口近くの空気を採取する。
・脱臭装置の排出口近くでは脱臭装置のON/OFF状態の2種類の空気を採取する。
・採取した空気は別途計量証明事業者において当該ガス濃度を測定する。
・測定方法は、固相吸着-加熱脱着法-ガスクロマトグラフ/質量分析法により実施する。
・上記測定結果により脱臭装置による当該ガスの除去効果を評価する。
◆ 実験結果 < 計量証明事業者における測定結果 >
測定場所 | 測定濃度 | 備考 |
コーティング作業台 | 110 μg/m3 | |
脱臭装置排出口(脱臭装置OFF) | 21 μg/m3 | |
脱臭装置排出口(脱臭装置ON) | 1 μg/m3未満 | 測定限界以下 |
脱臭効率 | 95%以上 |
※ 測定対象ガス:テトラヒドロメチルフタル酸無水物
◆ 結論
オゾンランプと触媒の組み合わせによる脱臭装置をコーティング装置近くに設置することにより、樹脂コーティング作業で発生するテトラヒドロメチルフタル酸を1パスで95%以上除去できることを確認した。
◆ 考察
コーティング装置の作業台直近に脱臭装置を取り付けることは物理的に困難なため、今回の実験においては作業台から発生する当該ガスのすべては処理できていない。
ただし、脱臭装置の排出口の濃度が測定限界以下であることから、5倍程度の高濃度なガスを処理した場合においても90%以上の除去ができると判断する。
また、もしも1パスでの処理でガスが除去しきれなかったとしても、今回の脱臭装置は施設内の空気を循環処理するタイプであり、繰り返し脱臭装置を通過することにより当該ガスを高レベルで除去できると考える。