ホタテ輸送時のアンモニア対策
◆ 研究課題
活ホタテを船で輸送するときに、ホタテが排出するアンモニアが蓄積することが問題となっているが、それを解決する方法としてオゾンによるアンモニア分解の有効性を確認する。
第一ステップとして、アンモニアを分解可能なレベルのオゾン濃度環境において、ホタテの生存が可能かどうかを評価する。
その方法としてホタテを保管した水槽内にオゾンガスを間欠的にバブリングすることによりオゾン濃度をコントロールし、その環境でホタテが排出することで蓄積するアンモニア濃度を継続的に測定する。
◆ 実験方法
5℃に管理した水中にオゾンガスを所定間隔でバブリングすることで気液混合する。
水槽内の平均オゾン濃度を0.05ppmで制御する。
比較のためにオゾンガスをバブリングしない水槽を併設する。
定期的に水槽内のアンモニア濃度を測定し、オゾン有無の差を確認する。
加えて、ホタテの状況を評価する。
アンモニア濃度はパックテストを用いて測定する。
水中ろ過装置を用いたオゾンガスバブリング
ホタテの生存確認
◆ 実験結果
実験A:オゾンガスのバブリング間隔60分毎に2分間運転
オゾンなし | オゾンあり | |
平均オゾン濃度 | 0ppm | 0.05ppm |
一時的な最高オゾン濃度 | 0ppm | 0.08ppm |
実験直後のアンモニア濃度 | 0.1ppm未満 | 0.1ppm未満 |
2時間後の 〃 | 1ppm | 0.7ppm |
4時間後の 〃 | 1.5ppm | 1.1ppm |
8時間後の 〃 | 2ppm | 1.6ppm |
24時間後の 〃 | 3ppm | 2ppm |
ホタテ生存率 | 80% | 20% |
実験B:オゾンガスのバブリング間隔30分毎に1分間運転
オゾンなし | オゾンあり | |
平均オゾン濃度 | 0ppm | 0.04ppm |
一時的な最高オゾン濃度 | 0ppm | 0.06ppm |
実験直後のアンモニア濃度 | 0.1ppm未満 | 0.1ppm未満 |
2時間後の 〃 | 0.5ppm | 0.5ppm |
4時間後の 〃 | 0.8ppm | 0.9ppm |
8時間後の 〃 | 1ppm | 1.2ppm |
24時間後の 〃 | 1.5ppm | 1.7ppm |
ホタテ生存率 | 40% | 20% |
◆ 結論
アンモニアを分解可能なレベルのオゾン水濃度の環境において、ホタテは生存困難と判断する。さらに追加実験として、オゾン濃度の変動(一時的に高濃度になること)を抑えた環境においても、同様にホタテの生存率は極めて低い状態であった。
また、追加実験においてはオゾンを供給しない水槽においてもホタテの生存率が低く、ホタテが環境の変化に非常に弱いと判断する。
◆ 考察
今回の実験で適切な評価ができなかった要因について検討する。
・ホタテは環境の変化に非常に敏感であり良好な水槽環境を確保する必要がある。
・環境の変化などによりホタテにストレスが生じると多くの排泄物を排出する。
・ホタテが生存できるオゾン濃度は重量比で考えると小魚よりも低濃度と考える。
上記を考慮すると、安定したホタテの生存環境を整えるノウハウを有する企業との共同研究が必要と判断する。