大学の馬術部厩舎の臭気評価
当社には臭気判定士免状を有したメンバーにより、各種施設の臭気測定を実施しています。その臭気回収に同行して臭気原因を調査し、対策案を提案してほしいという依頼もよくありますので、その事例を紹介します。
◆ 研究課題
ある大学において馬術部を移設する計画があり、移設先の住民に移設賛成の合意を得るためのいろいろな課題に対する協議が行われていました。その課題の一つに厩舎からの臭い問題があり、臭気問題に対して技術的なサポートをお願いしたい・・・という相談を受けました。
厩舎移設における周辺地域への臭気問題の可能性の調査、臭気の数値化、必要に応じて臭いの対策を検討したいということでした。
◆ 研究ポイント(ちょっとした工夫)
臭気の評価方法に関しては、悪臭防止法でも規定されている三点比較式臭袋法により官能的に評価し数値化する正式な方法で実施しました。臭気測定のタイミングとしては、まずは現在の地域の臭気状態を理解し、厩舎を移設した場合の臭いの変化とを比較する必要があります。ただし、悪臭防止法の臭気測定では、臭気の強さを判断するものであり、においの性質までは評価できません。つまり、下水の臭いも、森林の草木の臭いも、食事の臭いも、識別することなく臭気濃度の強さとして判断します。
今回は臭気測定の結果が厩舎の移設によるにおいに起因するのかどうかも含めて評価する必要がありました。そこで、臭気を回収するときに並行してその臭いの特性を判断することにしました。
具体的な方法としては、においを回収するときに、官能的に感じた臭いの性質(例えば、草木の臭いが強かったとか、洗濯の臭いがしたなど)を記録し、加えて数値化の手段としては厩舎の臭いを特定するための代表的な物質としてアンモニアなど3種類の物質濃度を測定しました。
◆ 研究成果(お客様への貢献)
現状の臭いを理解するために複数回にわたり天候や季節などいろいろな条件を変えて臭気測定を実施し、厩舎移設後の臭気評価に関しては、住民の承諾を得たうえで、馬糞を大学内に持ち込んだり、さらには短期間ですが仮厩舎を設置して臭気の変動を評価しました。その結果、地域の臭気が変動しないことを体感してもらい、数値的にも変化がないことを理解してもらえた結果、地域住民の臭気に対する不安が解消できたというお言葉をいただきました。