ホテルの重油臭
当研究室では脱臭方法や殺菌技術に関する研究・実験をするだけではなく、お客様が困っている実際の現場を訪問し、そこで実験をすることにより、対策効果を実感してもらう取り組みも実施しています。
今回はその一例を紹介します。
◆ 研究課題(お客様の悩み)
ホテルの地下室を改装してフィットネスルームを設けたところ、地下に降りる階段に重油のようなにおいが充満しており、いろいろな脱臭方法を試したけれど、思うように消臭できないで困っている。なんとか良い脱臭方法はないものか?・・・という問い合わせを受けました。
においの原因について聞いてみると、このホテルはリサイクル工場の跡地に建てられたもので、かなり年月が経過しているにも関わらず、雨が降った翌日などは地下から重油のようなにおいが漂ってくるということでした。
◆ 研究ポイント(ちょっとした工夫)
まずはにおいがどこから地下の階段部分に侵入しているのか?・・・その侵入を抑制しないかぎり、いくら脱臭しても、良好な脱臭効果は得られません。
実際に現場を確認させてもらうと、すでに扉の隙間などいろいろなところにシールがされており、においの侵入を防止するために苦労されているようでした。
意外と見逃すのが壁コンセントや天井の照明器具それと配電盤です。 今回もその部分が対策されておらずに臭いが侵入していましたので、シールを追加したうえで、脱臭装置を設置して脱臭実験をしました。
今回は重油系の臭いに対して、閉じられた空間で効率的に脱臭を達成することを目的として、オゾンと光触媒を利用した循環式の脱臭装置を用いて脱臭しました。 脱臭効果は官能的な評価に加えて、ニオイセンサーを活用した数値化により、目で見える形でお客様に脱臭効果を体感してもらいました。
ニオイセンサーはいろいろな臭いに対して、どちらの臭いが強いかというような絶対的評価には利用できないのですが、同じにおいがどれだけ脱臭できたかを判断するような相対的評価には非常に有効な手段と我々は考えており、各種測定器の特性を十分に理解し、多くの場面で有効に活用しています。
◆ 研究成果(お客様への貢献)
今まで困っていた臭いが脱臭できることを実感していただき、すぐに当社の脱臭装置を注文していただくほどに満足していただけたことが、我々の実験の成果だと考えます。
脱臭実験前
臭気測定位置 | ニオイセンサー測定結果 | ||||
LEVEL値 | 臭気濃度 | 臭気指数 | 脱臭効果 | 臭いの感じ方 | |
1F 階段入口 | 320 | 63 | 18 | - | 少し強いにおい |
BF_ジム入口 | 350 | 79 | 19 | - | 少し強いにおい |
脱臭実験後
臭気測定位置 | ニオイセンサー測定結果 | ||||
LEVEL値 | 臭気濃度 | 臭気指数 | 脱臭効果 | 臭いの感じ方 | |
1F 階段入口 | 270 | 40 | 16 | 37% | 楽に感知できるにおい |
BF_ジム入口 | 260 | 35 | 15.5 | 56% | 楽に感知できるにおい |
脱臭装置出口 | 170 | 14 | 11.5 | 82% | 弱いにおい |
ただ、すぐにご注文をいただいたのはありがたいのですが、実験に用いた装置は本来天井に埋め込むために設計されたものであり、それを置型に改造して実験したため、短期間での設計変更と品質評価が必要でしたが、このような柔軟な対応こそが当社の強みです。
後日、お客様から短期間で納品してもらい、脱臭効果にも満足しているとお電話をいただき、さらに他にもなんとかしたい臭いがあるので相談に乗ってもらえないか?・・・という言葉をいただいた時、研究者として強く喜びを感じました。