水槽の透明度
当研究室では脱臭方法や殺菌技術に関する研究・実験に加えて、その成果を数値化する仕組みの研究も実施しています。
オゾンラボニュースの第一報として今回はその一例を紹介します。
◆研究課題(お役様の悩み)
水族館の水質改善システムを開発していた時に、水槽の施設管理者から下記のような相談を受けました。
水のきれいさを数値化して容易に管理することはできないものか? 今は見た目だけできれいかどうかを評価しているが、担当者によっても意見が異なるので、水が汚れているのか? あるいは、水槽の窓が汚れているのか? がわかりにくく、どれだけ掃除をすればよいのか判断に困るので、何か良い方法があれば助かるのだが・・・ということでした。
◆研究ポイント(ちょっとした工夫)
水のきれいさを表現する代名詞としては、海や湖の透明度が有名ですが、水族館の水槽サイズで活用するのは困難ですし、評価する手段・装置にしても簡易的なものは存在しません。・・・なにか良い方法がないかと考えていた時に、ふとある映像が頭に浮かびました。
それは、きれいな海に潜ったとき、太陽の光が差し込んで海底にまできれいな波の模様をきらきらと映し出している光景です。
この光が透過する量を計測することで水の透明度(きれいさ)を表現することができると考え、何とか簡単な装置で達成する方法を検討しました。
その結果、安定した光を再現するために光源には白色LEDを活用し、一定の水を蓄えるパイプの底面に光源を配置し、その反対側に照度計を設けることにより、水を透過した光の照度を評価する装置を作成しました。
実際に実験したところ、水道水と評価するサンプル水との相対比較をすることにより一定の成果を得ることができましたが、測定結果の再現性が安定せず、お客様に提案できる品質は達成できませんでした。
それでもあきらめずに試行錯誤を繰り返した結果、安定性を妨げる要因はパイプ内での光の乱反射であることが判明し、その影響を最小限に抑えるいろいろな対策を設けることにより、シンプルな装置で容易に水のきれいさを数値化することができました。
◆研究成果(お客様への貢献)
今まで困っていた水のきれいさを数値で評価することができたことで、水槽が汚れているときに何をすればよいかが理解しやすくなり、助かるという言葉をいただきました。
実際の事例として、水が汚れているように見えたときでも、透明度を測定してみると水自体はきれいなことがありました。この時の汚れの原因はろ過装置の配管にわずかに空気が入り込み、非常に小さな気泡が水槽内に流れ込み、水槽内で光の乱反射が発生したことにより透明度が劣化していました。結局、対策をしないまま数時間後には気泡もなくなり、水槽はもとのきれいな状態に戻っていました。・・・水自体の透明度を測定できていなかったら、数時間の間にいろいろな対策に時間を費やしていたかもしれないので助かりました。・・という言葉をいただいた時、お客様への貢献を実感した瞬間でした。