細菌・ウイルスの話
夏の感染症を引き起こすエンテロウイルス
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インフルエンザウイルスやコロナウイルスなど、多くのウイルスが活発になる冬は、感染症が流行しますよね。これは、ウイルスが湿度の低い環境を好む傾向があるためですが、なかには湿度の高い夏に活発になるウイルスもいます。
夏の三大感染症と呼ばれる、手足口病、ヘルパンギーナ、咽頭結膜熱(プール熱)の原因となるウイルスは、高温多湿を好むウイルスです。
2024年夏、過去10年で最多の感染者数を出した手足口病は、「エンテロウイルス」が原因の感染症です。
エンテロウイルス71型、コクサッキーA6型などいくつかの種類があり、流行する種類はその年によって異なります。一度かかると、その型のウイルスの免疫はつきますが、別のウイルスにかかるとまた同じような病状を発症するため、ひと夏に何度も感染する場合もあり、注意が必要です。
感染経路としては、咳やくしゃみによる飛沫感染や、やぶれた水泡や便に含まれるウイルスが手を介して口や目の粘膜から感染する経口接触感染があります。症状がなくなってからも2~4週間は便にウイルスが含まれるため、十分注意が必要です。
多くの場合は、乳幼児が感染し軽症で治る場合がほとんどですが、大人が感染する事例も増加しています。大人が感染すると、子供よりも症状が重くなる可能性が高いです。
感染予防策としてアルコール消毒は、エンテロウイルスには効きにくいと言われています。なぜかというと、アルコール消毒が有効なウイルスは、エンベロープ(たんぱく皮膜)に覆われた構造をした「エンベロープウイルス」なので、アルコールがこのエンベロープを破壊することによってウイルスの繁殖を止めることができます。一方、エンテロウイルスは、「ノンエンベロープウイルス」です。エンベロープを持たないウイルスなので、ウイルスの表面がアルコールに強い構造になっています。ノンエンベロープウイルスには他にも、ノロウイルス・ロタウイルス・アデノウィルスなどがあります。
そのため、エンテロウイルスの感染予防には、石けんでウイルスを洗い流すことが有効です。特に、感染した子供の看病時には手洗いを徹底しましょう。
毎年、夏になると流行する感染症ですが、2024年には例年にも増して全国で大流行しています。7月14日までの1週間に、全国の患者数は4万1885人、1医療機関あたりの感染者数は13.34人と、過去10年の同じ時期で最も多くなっています。地域ごとには三重県が全国最多の33.69人と、いずれも警報レベルの基準となる5人を大きく上回っています。
例年、7月頃に流行のピークを迎える手足口病ですが、温暖化の影響で蒸し暑くなるのが早まったことにより、ウイルスが繁殖しやすい期間が長くなっていることが、この大流行に繋がっていると考えられています。さらに、新型コロナウイルスの流行によって感染症予防の意識が高まり、この数年間感染者数が抑えられていたことも理由の1つと考えられています。
共有物を触った後や食事の前には、しっかりと石けんで手洗いをして予防しましょう。
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