細菌・ウイルスの話
夏の食中毒
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気温と湿度が高い日が続くと、食中毒による患者数が増加します。
食品の管理には、いつも以上に注意を払わなくてはなりません。
夏の食中毒でもっとも多いのは、寄生虫アニサキスによる食中毒です。アニサキス幼虫は、サバ、アジ、イカなどの魚介類の内臓に寄生しています。魚の鮮度が落ちると筋肉に移動しやすく、人がそれを生で食べると、胃や腸を傷つけ、激しい腹痛や嘔吐などを引き起こします。
実はここ数年、アニサキスによる食中毒の発生件数は増加傾向にあります。アニサキス幼虫は、-20度で24時間以上冷凍すると死滅しますが、近年の輸送技術の発達により、冷蔵状態で長時間輸送できるようになり、内臓から筋肉に移動しやすくなったことが理由として考えられます。また、海水温の上昇などの環境変化によって魚介類に寄生虫が増えていることも考えられます。
予防のポイントは、魚が新鮮なうちに内臓を取り除くことと、白い糸のように見えるアニサキス幼虫を目視で確認して除去することです。
アニサキスの次に多いのが、細菌による食中毒です。カンピロバクターやサルモネラ菌、ブドウ球菌などの細菌は、湿度と気温が高い環境を好むため、夏の時期は食中毒が多くなります。
予防策としては、1.つけない、2.増やさない、3.加熱してやっつけるです。調理に取り掛かる前に、手洗いをしっかり行いましょう。洗える食品もよく洗い、肉や魚は他の食品と分けて保管します。調理後はなるべく早く食べ、保存する場合には、冷蔵庫や冷凍庫にすぐに入れるようにしましょう。
また、イベントが多い夏は、お弁当の管理にも注意が必要です。
2024年夏、デパートで販売されていたうなぎ弁当を購入した客約160人が、下痢やおう吐を訴える集団食中毒が発生しました。原因は、黄色ブドウ球菌による食中毒で、保健所の調査で、調理スタッフの手洗いが不十分であることや、手袋を着用していなかったことなどが分かっています。また、毎年夏に開催される野外音楽フェスでは、イベントスタッフ30人以上が食中毒の症状が見られ救急搬送されました。原因と考えられる仕出し弁当の保管状態について調査中ですが、細菌による食中毒は、温度が30℃以上、湿度70%以上の環境で繁殖しやすいため、高温多湿の時期は、お弁当を冷蔵庫に入れるなどの対策が必須です。
もちろん、食事をする前には、手洗いも忘れずに行いましょう。
夏の食中毒として紹介しましたが、これらの食中毒は特に9,10月も発生件数が多くなっています。秋にも多く発生している理由としては、温湿度が高いこと以外にも、行楽シーズンでお弁当の持参や野外で食事をする機会が多いことが考えられます。
さらに近年は、夏の記録的な猛暑で免疫力が低下し、体調を崩しやすくなっていることもその理由の一つになりそうです。
これまで夏から秋にかけて多く発生する、寄生虫や細菌による食中毒を紹介しましたが、年間の食中毒の約半分がノロウイルスで、特に乾燥する冬の時期の患者数が多くなります。扇風機をしまう時期になっても、食中毒への警戒は継続してくださいね。
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