においをどうやって数値化するの?

「くさい」ことを誰かに伝えるとき、どんなふうに伝えますか?
頭痛がするくらい。と体感を伝えることもできますが、人によってその言葉から抱くイメージにはばらつきがありますよね。

そこで、悪臭防止法では、臭気を数値化して規制をしています。また、私たちのような脱臭装置のメーカーでは、脱臭効果を検証するために、お客様のところで採取したにおいを数値化することもあります。これを「臭気測定」と呼んでいます。

臭気測定には2つの方法があります。
機器測定法・・・機器で測定し臭気の濃度を出す方法
嗅覚測定法・・・人がにおいを嗅いで数値化し「臭気指数」を出す方法
今回は、より人の感覚を表しやすい臭気指数を出すための嗅覚測定法をご紹介します。

まずは、現地から試料を採取してきます。悪臭防止法では、「敷地境界線上」「気体排出口」で採取した気体と「排出水」に対して、濃度や臭気指数が定められています。採取する試料に合わせた機材を使い試料を持ち帰ります。


▲【直接採取法】ポンプを使って「臭気採取袋」に臭気を採取しています。

今回は、「三点比較式におい袋法」を紹介します。
まずは「におい袋」を無臭空気で一杯にして栓をします。この「無臭におい袋」をたくさん、ひたすら作ります。その中の6つに、採取してきた試料を注射器で注入し、付臭におい袋を作ります。におい袋は3Lの空気が入るので、100倍に希釈する場合は30mlの臭気を注入します。
 


▲におい袋に「無臭空気供給装置」を使って無臭の空気を詰めています。

付臭におい袋1つ、無臭におい袋を2つを番号1〜3番になるようセットし、においを嗅ぐ「パネル」6名分を準備します。パネルは1〜3番のにおい袋を嗅ぎ、付臭におい袋が何番なのかを紙に記入して回答します。


▲1~3番のにおい袋。この中の1つにだけ、においが付いた気体が入っています。

全員の回答を確認し、希釈倍数を高めていきながら正解者が1人になるまで繰り返します。
つまり、どれくらい臭気を薄くすれば無臭と区別ができなくなるのか、を調べる方法です。

最後に集計して、臭気指数を算出します。正解と不正解の中間の希釈倍数から、個人の「嗅覚閾値」が分かります。極端に嗅覚に敏感な人・鈍感な人がいると数値が大きく変わってしまう可能性があるため、最上・下の2人分をカットし、残り4人のデータから平均閾値を出して、対数をかけて臭気指数を算出します。

なぜ対数をかけるのかというと、臭気が10倍に濃くなったとしても人間の嗅覚では2倍程度にしか感じない、という人間の感覚の特性を考慮し、対数を使って計算をします。ここに悪臭対策の難しさがつまっています…。

においの濃度と感覚については別の記事でご紹介しています。
https://www.sat.co.jp/library/smell/21

このような手順で、臭気という目に見えないものを、第三者にも分かりやすい数値で共有することができるのです。
今回は、数ある方法の内の1つを紹介しました。脱臭装置を取り扱うメーカーとして、お客様がお悩みの臭気をどのように数値化するのか、また脱臭の効果をどのように検証しているのかについてご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。