においの話
なぜ、おじさんは臭いと言われるのか
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「おじさんは臭い」
この言葉を聞いて、どのように思われますか?
根拠のない話だと思われる方もいらっしゃると思いますが、「一般論としてはよく聞くよね」という意見が多数ではないでしょうか。
今回は「おじさんは臭い」という意見が、なぜ一般論として市民権を得ているのか?その謎を解明してみます。しかし、中年男性の体臭がどうだというのは、多くのメーカーや研究者の方がたくさん解説されていると思いますので、こちらでは人間の鼻の特性からこの問題に切り込んでみたいと思います。
そもそも、自分の体臭には鼻が慣れているため、自分で認識するのが難しいのは、性別も年齢も関係なく同じはずです。
それなのになぜ、おじさんは臭いというイメージがあるのか。
それは、中年男性の嗅覚と比べて、女性や若者の嗅覚が敏感であることが、原因の1つだと予想して深堀りしていきます。
まずは男女の差です。女性は男性よりにおいの感度が高いという調査結果が複数あります。
一方、性差が見られないという調査も少なからずあるため、本当ににおいの感度に性別の差があるのかは、まだはっきりと分かっていませんが、女性の方が化粧品や香水などを嗜む人が多く、においへの関心が高いことが影響していると考えられます。また、女性ホルモンも嗅覚に影響を与えていると思われます。月経周期によって、においへの注意力が高くなる時期があるためです。
これらのことから、男性に比べて女性はにおいに敏感なため、男性は気にならないようなかすかな臭気にも不快感を抱いていると思われます。
続いて加齢の影響です。老眼などと違って、老化による嗅覚の低下は気が付きにくいですが、年齢を重ねると濃度が高いにおいしか判別できなくなっていきます。また、混合臭を嗅ぎ分ける力も低くなるため、若者が感知できるかすかな臭気に、中年男性は気が付かないことが多いと考えられます。
そしてもう1つ、年頃の娘が「お父さんは臭い」と拒否反応を示すケースをよく聞きますが、こちらも「おじさんは臭い」のイメージにつながっているのではないかと考えられます。多くの女性にとって、最も身近なおじさんは父親だと思いますので、体臭を嗅いで感じた「お父さんは臭い」という記憶が、中年男性のにおいのイメージを作り上げている可能性があります。
実は、女性は男性の体臭を嗅ぎ分け、自分が持っていない遺伝子の持ち主をパートナーに選ぶという調査結果があります。自分のHLA遺伝子の型と遠い人との方が、より生存率の高い子孫を残すことができるためです。反対に、自分の遺伝子と近い男性の体臭は臭く感じます。そのため、両親から受け継いだHLA遺伝子ですから、言わずもがな自分と近い遺伝子を持ってる父親の体臭は「臭い」と感じるのです。
父親の体臭を嫌うのは、人間として当たり前のことなので、娘に「臭い」と言われても落ち込まないでください。だからと言って、無理やり近づくなど娘が嫌がる行動は控えましょう。思春期に「お父さんはうざい」というような感情を抱いた記憶が、「おじさんは臭い」のイメージを増長させている可能性もあります。
「おじさんは臭い」が一般論になってしまった理由を、嗅覚の特性から考えてみました。
女性の方が嗅覚が敏感であること、若い頃は気になっていた微量な臭気を感じにくくなっていること、そして思春期の娘にとって父親は臭く感じること、を考えられる原因として紹介しました。つまり、おじさんが本当に臭いかどうかに関わらず、女性・娘・若者から臭いと思われてしまうことが多く、そのイメージが定着していると考えられます。
近年では、職場でのスメハラ(スメルハラスメント)という言葉が話題になっています。オフィスなどの室内での喫煙が一般的だった時代を考えると、他の臭気の原因が排除され、人間が放つ体臭が際立ってしまう時代になったことも原因の一つかもしれませんね。