真菌について(カビ・酵母って何?)

焼きたてのふかふかのパン、芳醇なワイン、香り高い松茸
どれも想像するだけでよだれが出てきそうな食べ物ですが、これらは「微生物」の働きなしには味わうことができません。

これまで、微生物の中の「細菌」や「ウイルス」のお話をしてきましたが、今回は「真菌」についてご紹介したいと思います。
菌とウイルスの違い」の記事で紹介していますが、「微生物」は細胞の有無から、「原生生物」と「ウイルス」に分けられ、細胞を持つ「原生生物」の中で、さらに核膜を持たない「原核原生生物(細菌類)」と、核膜を持つ「真核原生生物」に分けることができます。

今回紹介する「真菌類」は、「真核原生生物」に含まれます。
皆さんが日常でよく聞く名前だと、カビ・キノコ・酵母などです。

カビは、糸のような菌糸と胞子から成り立っていて「糸状菌」と呼ばれます。
さらにその中で子実体(柄の部分)を形成するものをキノコと呼んでいます。
また酵母とは、単細胞で発芽するように増殖をする「酵母様真菌」の俗称です。
冒頭で紹介したような食品は、これらの真菌類の働きによって成分が美味しく変化して出来ていますが、この変化を発酵と言います。

パン生地の発酵では、パン酵母を砂糖で溶き練り込むと、酵母が糖を食べて炭酸ガスを出すためパンが膨らみます。また、ぶどうの皮には野生酵母がついていて、糖を分解して炭酸ガスとアルコールを出しワインが出来ます。

日本の発酵食品とゆかりの深い菌といえば麹菌ですが、こちらもカビの一種で、醤油、味噌、清酒などの発酵には欠かせません。酵母は他の菌のサポートをする役割もあるため、麹菌と酵母の協力によって、醤油や味噌が出来るのです。

真菌は現在約10万種類あると言われ、そのうちの一部は食品などの有用真菌として利用されていますが、繁殖して人間の体内に入ると感染症を引き起こすものも多くあります。また、真菌は細菌よりも構造が複雑なため、抗細菌薬や抗ウイルス薬に比べて、抗真菌薬をつくるのが困難です。そのため、抗真菌薬の数は少ないのが現状です。食品を取り扱う場所では、殺菌対策が不可欠ですが、2024年には麹菌を使用したサプリメントに人体へ有害なカビが含まれていることが分かり、大騒動となりました。製造過程で意図しないカビが発生したことが原因と考えられていますが、有益な菌と有害な菌、人間との共存には注意が必要です。