田中綾「ネイリスト検定」

数ヶ月前、学生時代からの友人から、ネイリスト検定を受けるのでモデルになってほしいと言われました。
結構なおばさんの私たち、モデルがおばさんがでいいのかという葛藤はありましたが、おばさんでも何か挑戦しようとする友人を応援したい気持ちでOKしました。

ネイル学校に何度か行き、練習に付き合いました。圧倒的に若い女性ばかりで、講師の方も私たちより明らかに年下でした。
同じ教室でヘアセットを学んでいる若者女子もいて、みんな一生懸命な姿に、今時の若者も捨てたもんやないな〜、と感動しました。

本番の日が近付くにつれ、なぜかモデルの私も緊張が高まりました。いかにもおばさんな生活を日々過ごしている中で、仕事中も家事中も爪を折らないように割らないように、かなり気を使いました。
爪の切り方も、検定のためにスクエアカットという角を残す切り方にする必要があり、いつもと勝手が違う指先での生活は結構大変で、数日前からは絆創膏を巻いて過ごしました。

いざ本番、私は完全にナメていました。大阪南港の会場には受験者がざっと1000人以上、ネイリストを目指す人がこんなにいるとは。圧倒的に女性が多いですが、ちらほら男性の姿も。モデル側は、お母さんや彼氏、旦那さんと思われる人も大勢いて、私だけが場違いじゃなくてホッとしました。
70分の実技試験では、真っ赤なネイルと、右手中指に花のアートを施します。実際に塗り始めるまでに、爪を削ったり整えたり磨いたりと、ずぼらな私には信じられないぐらいの工程を専用道具で仕上げるみんなの姿に、私の爪は一生手抜きか人の世話になるしかないと思うのでした。

受験者はその後筆記試験があるため、友人とはそこでお別れ、一斉に退出するモデルは全員真っ赤な爪という異様な光景、右手中指にはそれぞれ個性的な花のアートで彩られていました。

翌日が仕事だったため、帰宅後すぐネイルを落としてしまったのですが、自由な爪を手に入れつつ、せっかくの作品をもっと堪能したかったな~という複雑な気持ち。
友人は無事合格し、モツ鍋屋でお祝いしていると、次の春の検定でもモデルお願い!と言われ、またあの日々がやってくるのかともう緊張しているおばさんモデルの私なのでした。